隔週発売の雑誌プレジデントで、三菱総合研究所理事長の
小宮山宏さんが、「日本も原発ゼロは達成できる」と断言しています。
2050年以降にはエネルギーコストはゼロにできるとも・・
以下はその記事から抜粋させて頂きます。
実に興味深いので長いですが読んでください。
日本の再生可能エネルギーの取り組みはまだまだです。
日本の難しさは、これまですでに30兆円も原発に投資し、
設備を作ってしまったことにあります。
原発は、「作るとき」と「使い終わった後」に非常にお金がかかります。
でも、使っている間はとてもコストが低い。
これだけ原発を作ってしまったわけですから、
使い終わった後のことを考えず、使い続けていれば費用は安くすみます。
つまり、今の日本は、「使い終わった後をどうするか」
という問題を先送りにしているのです。
ただ、日本は東日本大震災で深刻な原発事故を起こしました。
世界の国々は、「日本ですら事故を起こしたのだから、
うちの国も起こすかもしれない」と、原発の稼働や新設を止めた。
欧州では、新設や稼働はもちろん、将来にわたって原発は使わないと
決めた国も出てきています。
中国やベトナム、トルコなども、新設計画はありますが
実際は進めていない。それが世界の潮流になっている。
それなのに、事故を起こした当の日本が、
なぜまだ原発を推進しようとしているのか?
さらに、政府は「今後もベース電源は原発で」と言っているようですが、
今、「ベース電源」という考え方をしている国は、
日本くらいじゃないでしょうか。
確かに風力や太陽光は、気候などによって発電量が変わりますが、
水力やバイオマス、地熱は安定電源です。
さらに、風力や太陽光でも、水力と組み合わせることによって、
電源としての不安定さを解消できます。
水力発電では、余剰の電気があるときに、
タービンを逆回転して下流の水を上の貯水池に上げておき、
必要なときに水を落として発電する「揚水発電」ができます。
いわば電気を蓄えておく蓄電池の役割を果たします。
これは非常に効率がよくて、「貯めた」電気の85%くらいは後で
使うことができます。
揚水発電はもともと、原発の電気が需要の少ない夜に余るため、
それを活用するために開発されたものです。
でも、太陽光や風力など、供給が不安定な電力の
余剰電力を貯めておくのにも使えます。
九州電力では今年のゴールデンウィークに、需要の70%以上を
太陽光で発電しパンク寸前になりましたが、
揚水発電がフル稼働して問題を解決しました。
水力発電は、さらに大きな可能性を秘めています。
現在主流の、大型のダム開発を伴うような水力発電所は、
すでに作れるところには作ってしまっており、
新設は難しくなっています。
しかし、出力規模1万kW以下の小水力発電のポテンシャルは高く、
全国で約1000万kWと試算されていて、原発10基分に相当します。
このすべてを開発するのは難しいかもしれませんが、
原発3基分くらいなら十分可能です。
こうした小規模の水力発電は、ダムを使いません。
水力発電は、要は、上から下に流れる水の力(位置エネルギー)を
使えばいいので、ダムが造りにくいようなところであっても、
小さなためを作って管路で落とし、
下でタービンを回せさえすれば可能です。
例えば、和歌山県の有田川町では、県営ダムの放流水を
使った町営二川小水力発電所を運営しています。
ダムは通常、下流の生態系を維持するために、
常に一定量の放水を行う「維持放流」をしています。
この放流水にタービンを入れ、
最大200kW、年間120万kWhの電力を作っているのです。
日本では、ほとんどのダムで維持放流をしていますから、
開発の可能性は非常に大きいといえます。
今後の電力システムは、従来のように大きな発電所で
集中的に発電して電気を配る、というやり方ではなくなるでしょう。
揚水発電のほか、電気自動車やプラグインハイブリッド車などに
搭載された電池も、太陽光や風力発電の余剰を
貯める蓄電装置として使えます。
こうした多様な蓄電機能と、発電パターンの異なる複数の
再生可能エネルギーを組み合わせて、
電力を供給する技術が求められます。
残念ながら日本は、こうした再生可能エネルギーの分野では
後進国となってしまっています。
ドイツでは、電力供給の30%以上が再生可能エネルギー、
中国でも昨年は28%に達していますし、
アメリカももうすぐ20%になります。
日本は2015年現在で、わずか4.7%です。
2050年以降エネルギーコストはゼロにできる
こうした現実を見ると、エネルギー問題について
悲観的になるかもしれませんが、その必要はありません。
まずは2050年の日本を描きましょう。
人口は今より2割以上減少していますし、
技術革新で省エネルギー化も進み、
エネルギー消費量は今の半分以下になります。
今よりずっと楽になります。
それくらいの量は、再生可能エネルギーで十分供給できます。
5つの再生可能エネルギーをどんどん開発する。
それがもっとも負担を伴わない方法なのです。
次世代に対して、2050年以降はタダになる
エネルギーを残すことができます。
その上、現在化石資源の輸入に使っている25兆円が、
すべて内需に振り向けられるようになります。
都市よりも地方に落ちるお金となり、
地方再生の中核となるビジネスになりえます。
現在日本では、原発に反対している人の方が多いのに、
原発を稼働させ、原発事故が起きたときの避難演習をしたりしている。
ほかにも、サイバーテロに襲われたらどうするか、
北朝鮮が原発周辺に爆弾を落としたらどうするかと、
リスクや不安要素は本当にたくさんあります。
こうした不安を抱えて「イヤな思いを持ち続けるコスト」を、
将来も抱え続けるのは本当にいいことなのか。
しっかりと考えるべきでしょう。
2017年10月27日 18:30〜19:30
浜松駅北口JR敷地外広場
「さよなら原発の夕べ 浜松」